第25回 幼年童話を書いてみる 2
幼年童話を書いてみる 2
(改作)
ひろい海のまんなかに、きいろいうきぶくろが浮かんでいました。どこから流れてきたのかレモン色したうきぶくろは、ふわふわふわふわ あてもなく海のうえをさまよっていました。
「のんきなもんだねえ……」
カモメがよってきて、うきぶくろにのっかりました。
「どこからきたんだい?」
「あっちから……」
「ずっと、ひとりかい?」
「ずっと、ひとりさ」
「たいくつだろ?」
「たいくつだね……でも、クジラの背中にのって、しおをふかれたときは、おもしろかったよ。大きな観光船のスクリューにまきこまれそうになったときはドキドキしたよ」
うきぶくろは、ひさしぶりのおしゃべりがたのしそうでした。
「ふーん」
カモメはつぶやくと、どこかにとんでいってしまいました。
それからしばらくしたある日のことです。麦わら帽子をかぶった小さな女の子が、さんばしの上から海をながめていました。
青いワンピースを着た3つくらいの女の子です。
「あれ?」、女の子が目をみはりました。
レモンみたいなものが浮かんでいるのはなにかなあ?
とつぜん強い風がふきました。
それが、まんまるい、きいろいうきぶくろとわかると、ヒュー、ヒュルヒュル……と、すごい風が麦わら帽子をとばしてしまいました。お気にいりのリボンのついた麦わら帽子です。
「あ――、まって――、」
女の子は両手をひろげ、麦わら帽子をおいかけるとドボン! と、海におっこちました。水しぶきがあがって、女の子はくるしそうに あっぷあっぷ あっぷあっぷ……。
※この後、うきぶくろはカモメから女の子が溺れていることを知らされ、ハッとします。味わったこともないピンチに出くわします。同時にそれは、人形が命を吹き込まれたときのような輝きに満ちた瞬間です。
女の子は一人であるはずもありません。たとえ5枚であっても誰と海へ来たのかを決めなければなりません。幼年童話に限らず台詞は最小限に短くすることを心がけて下さい。うきぶくろの「たいくつだね」に続く台詞は長いので「たいくつだね……でも」と一度切ります。「うきぶくろはうれしそうに、」を入れてから「クジラの背中にのって」と続けばスッキリと整理されます。
浜尾
0コメント