第18回 「童話の花束」と「メルヘン文庫」


「童話の花束」と「メルヘン文庫」


「公募ガイド」では故、小暮正夫先生による「童話学園」が掲載されていました。

カサをテーマに原稿用紙2枚の童話を募集していたので送ったところ「今月の優秀作」として名前が載りました。

黒いコーモリガサを広げたとき、そこに穴が開いていたら、星の光に見えるかもしれない……という発想を長年、暖めていたのです。

しかし、作品としては、まだまだ改良の余地があったことは否めません。作品と共に送られた小暮先生のアドバイスは「忘れ物の傘を路上で売る行為はいかがなものか」というものでした。調べると、たとえゴミであっても「占有離脱物横領」になることがわかりました。そこでカサ売りのおじさんの口上にある「忘れ物のカサ」を「もらい物」に直し、4枚ピッタリにおさめました。

主人公を高田くんという若いセールスマンにして、おじさんの子ども時代に傘の穴が星みたいに見えたという巧みな話術に見物人が次々にカサを買ってしまうというものです。

1998年、「コウモリガサの一番星」という作品は、JOMOの童話賞(現・ENEOS終了)佳作になりました。「心のふれあい」というテーマで受賞作を集めた作品集が「童話の花束」小冊子にまとめられました。

池袋のコミュニティ・カレッジで、立原えりか先生の童話教室で学んでいた私は、今度はアンデルセンのメルヘン大賞に挑戦しました。ある日、「浜尾さんの作品はおしかったのよ」と、立原先生から2次審査まで通過したことを知らされました。「ハートのふきだまり」というタイトルの作品は構成や文章の甘さが原因であったことに気づき、何度も書き直しをくりかえしました。

それでも納得がいかないまま、もやもやが続き、数年後に出版した「ショートショート集」に収めるまで20回は書き直しました。

さて、11月になって教室では「クリスマス」という課題が出されましたが、当時、私にはどうしても乗り気になれないテーマでした。

「クリスチャンでもない日本人がクリスマスというテーマに寄り添えますか?」

講習中にこんな疑問を投げかけると、

「そうかもしれません。でも、クリスマスをきっかけにしたお話を膨らませて下さい」

といわれ、私は渋渋、課題にとりかかりました。そして、舞台をニューヨークにして、日本女性がブリキ玩具コレクターのアメリカ人夫に玩具を買い求める話を書きました。

1999年「Xmasにロンリー・クラウンを」というタイトルの作品がアンデルセンのメルヘン文庫16集に佐々木悟郎さんのイラスト付きで収録されました。乗り気になれなかったテーマが優秀賞で、7年後、書きたいテーマ作品で再び応募した作品が落選でした。主催者側が何を求めているのかを見極めることが大切だということでしょう。

浜尾


童話作家|浜尾まさひろ

作成者|随筆春秋事務局 正倉一文

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