第08回 「よくばりな犬」の直し

「よくばりな犬」の直し


リライトは巧く書けましたでしょうか?

いえ、巧く書く必要はありません。自分なりのアレンジをすることが目的です。

「よくばりな犬」は、一九九二年に私が受けた立原えりか童話塾通信講座の第三回添削課題作品でした。

犬は、自分がくわえている肉よりも、A もっと大きな肉がほしくて、カラスにいわれたとおりの道をすすんでいきました。

とちゅうで、B ものすごい風がふいてきて、たちまち、あたりがくらくなりました。

そのうちにパラパラと雨がふりはじめました。けれども犬は、わきめもふらずに、C あるいていきました。

やがて、大きなカシの木にたどりつきました。そのカシの木を左にまがっていくと、まるきばしがありました。

「肉をくわえた犬はどこだ」

まるきばしをわたりながら、ふと、D 下をみると、川のなかに自分よりも多きな肉をくわえている犬を見つけました。

「ようし、おれがうばってやる」

犬は、ひくい声でうなりながら、E 川のなかの犬をにらめつけました。

「ウー、ウー、ワンッ」

犬がいきおいよく吠えたのでくわえていた肉がポチャン――。落ちてしまった肉は、ゆれながら流れていきます。しずみかかったそのとき、ふいにカラスがあらわれて肉をひょいとくわえると、どこかにとんでいきました。

(原文のまま)

原文ではABCDEの「、」が多すぎます。意味のない句読点は読むリズムを妨げるリスクがあります。ただ、幼年童話は平仮名が多いので句読点も多くなる場合があります。そのへんの感覚は書きながら修得していくしかありません。文を声に出して読んでみると、どこで「、」を入れたらいいかわかります。

下線のある二行(とちゅうで~ 以降)を削除したことでスッキリとなりました。あってもいいのですがページ数の関係で削除しました。

肉が落ちる描写は「川のなかに」を「川面に映った」としたことで、鮮明なイメージが広がったのではないかと思いますがいかがでしょうか?

ラストの「肉は、ゆれながら流れていきます」を「肉はゆれながら沈みかけました」と簡潔にすることで「ふいにカラスがあらわれて――」とつなげて一行分、減らすことができました。台詞や地の文は、でくるだけ短くすることを心がけて下さい。

次回も実践です。落語の三題噺である三つのキーワードを出題します。

浜尾


童話作家|浜尾まさひろ

作成者|随筆春秋事務局 正倉一文

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