第01回 大人から子供までの話


大人から子供までの話


「幼年童話」は子供が一人で読めるようになる時期(三才ぐらいから低学年)に出会う物語のことです。神沢利子さんの「フライパンじいさん」がこれにあたります。

幼い子供が読むものだからといって「お花」「おだんご」というように名詞の頭に「お」を付けたり、やたらと幼児語を使用する必要はありません。幼年童話は平仮名が多く、漢字が少ないの現状です。しかし、子供は平仮名よりも漢字をシンボルとして記憶しやすいデータもあります。多少の漢字を使用することで、母親が教えながら読み聞かせをすれば、子供はストーリーと共に漢字を覚えてしまうメリットがあります。我が子を観察することでストーリーも創りやすいかと思いますが、自分にしか書けない独創性にあふれるものを心掛けてほしいと思います。

コンクールの応募作品で一番多く書かれる話は「はじめてのおつかい」で次が「捨て猫を拾ってくる」話だそうです。大人にとって都合の良い「いい子」を書かないことが幼年童話の鉄則です。生き生きとした子供を描いて下さい。

「ファンタジー童話」は、現実にはありえない出来事を描くもので、リアリズムが本質になければならない物語のことです。低学年から大人まで読める幅広い分野で、角野栄子さんの「魔女の宅急便」がこれにあたります。ファンタジーを書くにあたっての注意点は読み手が、少しでもその内容に「嘘っぽさ」を感じるならば、その作品は失敗作になるということです。手直しをして完成に近づくための努力をしなければなりません。「嘘っぽさ」の中には「違和感」「ご都合主義」「独り善がり」などがあります。

たとえば、運動会でいつもビリばかりの男の子が速く走りたいと願っているとします。彼には、亡くなった兄がいる設定です。男の子は、兄の運動ぐつを履いたとたん、兄が速くなる……というのは説得力がありません。しかし、兄が運動会で一等ばかりとっていて学校でもトップの速さの持ち主だったとしたら……兄の運動ぐつを履くことによって、魔法のパワーが備わることはファンタジーとして成立することになります。

そしてこの作品のタイトルとして多くの人が「ふじぎな運動ぐつ」と付けるでしょう。

悪くはないのですが「ふしぎな〇〇」というフレーズは、むかしから手垢がつくほど使われているので他のタイトルの方が良いかもしれません。コンクールに応募したとしても新鮮な印象をもたれないからです。

ページ数は、五枚が良いと思います。十枚以内というコンクールもありますが、五枚以内にまとめることで、余分な描写を削除するトレーニングにもなるからです。あとはオリジナルをたくさん書き続けることでしか上達の道はないと考えます。

浜尾


童話作家|浜尾まさひろ

作成者|随筆春秋事務局 正倉一文

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