第32回 オマージュを書いてみる2

イラストは、Microsoft Copilot(人工知能)の作品


オマージュを書いてみる2


キツネは一本の柿の木のまえに来ると、キュンと鳴いて、とびはねました。 さむらいが木を見あげると、なんと、子ギツネがさかさまにつるされているではありませんか。うしろ足が縄でしばられているのです。子ギツネはクンクン鳴いて、くるしそうでした。 

「これは、おまえの子か?」 

さむらいのことばに、母ギツネがうなずいたように見えました。 

「かわいそうに、小童(こわっぱ)どもにイタズラでもされたか。それで、おれに助けをもとめてきたのだな……」 

さむらいは、刀をぬくと、一しゅんに縄が切れて子ギツネがスルッと落ちてきました。母ギツネが子ギツネのそばにいこうとしたとき、「まて!」

さむらいが呼びとめました。 

さむらいは、子ギツネを持ちあげると、刀をむけました。 


※ここからがクライマックス(山場)です。読者に緊迫感を与える必要があります。それはに子ギツネに刀をむけさせることです。 


さむらいは、もう一度、子ギツネをにらむように見ると、子ギツネはおびえてカタカタとふるえました。母ギツネは、さむらいを起こしてしまったことで胸がつぶれそうな思いでした。恐くなって、かたく眼をつぶりました。 

そのとき、さむらいが刀をつきさしました。母ギツネの足もとに、なにかがふれました。 

「ぼうや」 

さむらいは、子ギツネの足にむすばれた縄を切ってくれたのでした。 

「いいか、もうおれを起こすんじゃないぞ」 といって、子ギツネを母ギツネに返してやりました。二匹は逃げるように去っていきました。 


※子ギツネが首をはねられてしまうのではないか? と、読者をヒヤヒヤさせられたら狙いどおりで、展開と結びがスムーズに受け入れられます。 


さむらいは、またもとの木かげにどっしりと横になりました。すぐに大きなイビキが聴こえてきました。 

おわり 


※「オマージュを書いてみる1」では、「親ゆびで刀の刃をのぞかせて見せました」を「こしの刀に手をかけて、チラッと光る刃を見せました」に変更しています。センテンスはできるだけ短く、を心がけてください。さむらいが柿の木に行く前に子どもたちが駆けだしていく描写を入れた方が読者に親切です。好きな作家のオマージュに挑んでみてください。 


浜尾 

イラストACより


童話作家|浜尾まさひろ

作成者|随筆春秋事務局 正倉一文

0コメント

  • 1000 / 1000